石井光太郎著『会社という迷宮』ダイヤモンド社,2022年
著者の石井光太郎さんは、ボストンコンサルティングを経て、コーポレイトディレクション社の設立に参加し、2003-21年の間、代表取締役を務められていた経営戦略コンサルタントです。
この著作の中で、特に共感した記述がふたつある。
ひとつは、「コンサルティングとは、クライアントとの対話である。(中略)人は、自分で「わかる」ことによってしか、本当の意味で「わかる」ことができない。ましてや、行動に移すことなどできない。逆に「わかれ」ば、ほとんどの場合行動できる。答えのない難題に直面したクライアントに対してコンサルタントができることは、自分もしくは自社がどう行動すべきかを、自分で「わかる」過程を手助けすることでしかない。もとよりそれは、そのクライアント固有の、どこまで行っても明快な答えなどない難題なのである。コンサルタントの側も、その答えなど、最初からわかっているわけはない。コンサルティングは、完全な答えなど望むべくもない不確実な環境の中で、それでも「どうすることが最も善いことなのか」を、クライアントとコンサルタントが一緒になってなんとか探り当てる(「わかる」)ための対話なのである。」という記述である。
そしてもうひとつは、「「会社」とは競争をするために生まれてきたものではない。せいぜい言うとしても、込められた夢や志を体現するために、競争しなければならなくなった、というだけの話なのである。その逆ではない。たとえ、日々どれだけ競争に翻弄され、敗北すれば死の危険に晒されている現実があったとしても、それは目指すものがあるからである」という記述である。